マスグレ改造(2)
さて、前回に続いてFender Custom Shop製Mastergradeシリーズのストラトを改造していきます。
前回の改造点はピックアップ以外のアッセンブリすべて。しかし、結果として狙った音は実現できませんでした。
私が狙うのはヴィンテージ指向で、太い音。
前回のパーツ変更のどこが悪かったのかを考えます。
▼ピックアップセレクターはCRL製、ポットはCTS製、ジャックはスイッチクラフト製。
このあたりのパーツに関しては、あまり影響はなかったのでは?と思っています。
厳密には影響はあるのでしょうが、あまりポットやピックアップセレクターのメーカーの違いが音に影響するとか聞いたことありません。
仮に影響したとしても微々たるものであろうし、パーツのチョイスの方向性は間違っていなかろう。
(余談ですが、、、私は本家フェンダーのヴィンテージタイプの製品のポットはCTS製ヴィンテージタイプのポットと同型なのだろうと思っていたのですが、これ、微妙に仕様が違いますね。基板部分の色が違う。
同じくCRL製のセレクターも微妙に形が違う。フェンダー製品にもともとついてるポットやセレクターと全く同じものは市販されてるのかな?詳しい人、教えてください。)
↓手前が元々のもので奥がCTSの現行品
▼コンデンサはモントルーのセラミックタイプのもの。コンデンサはそれなりに音に影響があるとの話もきくが、これもビンテージ指向ということであれば方向性は間違っていないであろうから今回は手をつけないことにする。
▼ということで、改造の第2回目で手をつけるのは、配線材とハンダ材。
前回は現行品のクロスワイヤーを使用しましたが、今回はビンテージの配線材とハンダを使ってみることにしました。
白羽の矢がたったのが、Western Electric製の配線材。
これはHuman Gearさんが取り扱っていたもののようですね。内側の絶縁が絹巻きのものです。
ただ、
私は撚り線だと思って買ったのですが、これ、単線だったんですよね。無知とは恐ろしいものです。ほんまアホやな自分。
正直狙っている音になる気が全くしない。
しかしまあ、せっかく買ったのだし、もったいないからこれに交換します。(オイッ
ハンダはビンテージのALPHA製のものを使用。
それでは配線開始…
???
ハンダが全然なじまない!!
単線の配線って初めてなんですけど、こんなにはじくもんなんすか?全然ぬれない…
くっつけよ
くっつけよ!(怒り)
くっつけよぉ!(焦燥)
くっつけよおおぉ(嘆願)
ということで奮戦の末の完成の図。
(多少のハンダの乱れは見なかったことにして粛々とピックガードを閉じる…「臭いものにはピックガードをせよ」)
、、、さて、音の結果やいかに?!
うーん、単線と撚り線の音の違いは噂には聞いていたけど、「はー、なるほどね」というかんじ。
音自体はしっかりした芯のある音でピッキングニュアンスへの追従もよく、総じて好印象。
しかしいかんせんストラトらしい雑味がない!
低音域がとてもすっきりしている。すっきりしすぎている(※一般的なストラトに比べてという意味)
うーん、いい音なんだけどなぁ。
ちょっと方向性が違うかな…
【…後日談】
こんなん買っちゃいましたけどー
(写真を撮ったのが中身を取り出した後になってしまったので、ただの空箱です…)
FS-STD/NICKEL 6というペグです。
実は配線材と同じタイミングで注文していて、ほぼ同じタイミングで到着しました。
このペグはミュージックランドkeyさんがプロデュースしているもの。KEY'STONEというブランド名は中々洒落てますねぇ〜
乱暴にコンセプトを紹介すると、「ビンテージの時代、ペグのポスト(弦が絡んでる縦の棒の部分)はブラス製やったんやで。ビンテージサウンド求めるんやったらブラスポストやろ!」というもの。 説明ザツでごめんちょ
細かく観察してみると現在の一般的なペグと微妙に仕様が違っていて面白いですね。
左: 元々ついてたペグ
右: FS-STD
ブッシュの長さが元々ついていたものと違いますが、長さより問題になるのは内径と外径ですね。
元々ついていたものはフェンダー純正のものなので、おそらく外径9.2φ・内径6.5φ。
FS-STDは情報を見つけられなかったものの、gotoh製であり、他のgotoh製ペグのブッシュと見比べてみましたが、同型でありそう。(計測はしていません)そうであるならば、こちらは外径8.8φ・内径6.5φ。
ということで、FS-STDのブッシュは元々のブッシュ穴にはぶかぶかでフィットしませんでした。内径は同じなので元々のブッシュをそのまま使います。
(「内径は同じ」の図)
さて、FS-STDに関して特徴的なのは、ポストのスリット(切れ込み)部分の深さが通常のものより深くなっています。
最初の写真を見比べてもらうとその深さの違いがわかると思います。どうやらビンテージのペグも、これくらい深い切れ込みだったらしい。
スリット部の深さが変わることでナット〜ペグポストまでの弦の角度(ナット部に弦を押さえつける力)が変わります。これはひいては弦のテンション感に影響するとのこと。H.A.P.Mなどペグポストの高さを変更できるタイプのペグをいじったことのある方なら、この一見些細な違いの重要性が分かるかと思います。
ちなみにポストの穴の深さも違っているようで、FS-STDでは大分浅い穴になっています。
なので、弦をケチって流用しようとするとこんなことになります↓
は、はいらない〜
先っぽを切って無理矢理入れましたよっと
うーむ、ペグだけピカピカだぜぃ…
それでは気になる音の方はどんな感じでしょうか?
まず率直な感想として…思っていたよりも音変わりますね、コレ。
昔持っていたFender USAのジャズマスターのサドルをブラス製のものに換えたことがありますが、その時の音の変化と似ています。(ただし、サドルを変更した時に感じられる変化ほど劇的ではない。)
ブラスという金属特有の響き方というのがあるのでしょうね
まとめると、
①中域にフォーカスした音になり、
②各弦の音の分離感は増し、
③響きに独特の粘り(?)が加わり、
④若干コンプ感が増して、ダイナミクスが均一になる印象
でした。
①と②について付言しておくと、分散していた音の成分がギュッと中心(中域)に向かって濃縮され、濃くてはっきりした音が出るようになった感じです。
③と④は響き方や弾き心地に関わる問題です。③はあくまで感覚の問題なので言語化には無理があるかも。ただやはりこういったパーツを換えると楽器全体の響き方や弾き心地もそれなりに変わりますね。
FS-STDのレビューの中で、元のペグを選ぶかブラスポストペグを選ぶかは「好みの問題」というような表現をしておられる方がいましたが、自分で試してみるとその意味がよく分かります。
ブラスとスチールは音響特性に優れた金属と言われます。響き方は異なるもののどちらもよく響いていて「いい音」であると言えるでしょう。どちらを採用するかはもう少し取っ替え引っ替えしながら気長に決めようかと思います。
で、
結果的に今回の改造は成功なのかどうなのかという話ですが、配線材の交換とペグの交換を行った結果、良くも悪くも元とは全く違う音になってしまいました(笑)
これも良い音だとは思いますし、何より非常にヌケの良い音ですが、王道なストラトの音からはだんだん離れていってるような気が…
こうして色々いじっていると、このマスターグレードシリーズは元々かなり追い込んだセッティングがされているのだと感じます。
自分ではアップグレードしているつもりでも、手を加えれば手を加えるほど、なんかよく分からないことになっていく…
私の手元に来てから今まで全く手を加えずに使ってきたので尚更その感は強いですね。
でもここまできたんだもん、改造の魔手は止めないよ。
ということで、次回、マスグレ改造の第3回です。乞うご期待。